後藤特許日記

後藤特許日記(2021年8月)-ベランダの花(4)-

 2021年8月、ベランダのレモンの新葉が虫に食われて無惨な姿となった。そういえば、去年も若い葉は食べ尽くされ、おまけに黒い糞が残されていた。今年は見つけてやると、残っている葉をそっと手で左右に分けると、いたいた、アゲハチョウ(ナミアゲハ)の幼虫が。レモンの仇とばかり火箸(落ち葉掃除用)でつまんで下の茂みに投げ捨てた。しかし、だんだんと後悔の念が大きくなった。確かに、レモンの側からすれば、にっくき害虫をよくぞ退治してくれたということになるが、アゲハチョウの側からすると、ここまで成長してもう少しで空を飛べるところだったのに思わぬ災難に出くわしたということになる。こんな葛藤に苦しんでいる中、数日後にまた、レモンの葉にアゲハの幼虫(5齢幼虫)がいるのを見つけた(写真左)。今度は殺生すまいと心に決め、レモンには悪いが、静かに見守ることにした。すると、いつの間にか幼虫がレモンの木からいなくなっていた。調べると、アゲハの幼虫は、蛹を作る前に、自分の育った食草を離れて安全な場所に移動するらしい。それで、レモンの木の周辺を探してみたが、蛹は見つからない。諦めかけていたところ、偶然にも、蛹から羽化したばかりのアゲハを見るという幸運に巡り会った。ブドウ棚の手入れをしようと、ベランダの隅に置いてあった踏み台を取ろうとした時、踏み台の後ろの壁に羽化したてのアゲハが止まっていたのだ。急いでカメラを持ってきて撮ろうとすると、よろよろと動き出し、皺を伸ばすためか羽を広げたり、飛ぶ前の準備運動のためか壁の上方に向かって歩き出したりした(写真中央・右)。しばらくして、静止状態から二三度羽ばたくと、アゲハはベランダの柵を越え、空へ飛んでいった。
 それから1週間後の昨日(8月28日)の朝、植物に水を遣るためベランダに出てみると、一匹のアゲハチョウがレモンの木の周りを舞っていた。すぐにいなくなったが、あれはきっと、うちのレモンの木で育ち飛び立ったアゲハに違いないと思った。それとも、幸運にも茂みの葉に引っかかって命拾いした幼虫の蛹から羽化したアゲハだったかもしれない。アゲハは羽化して5日目くらいから産卵するとのことだから、きっとそのために来たのだろう。アゲハの成虫の寿命は2週間程度という。短い命だ。
 今年の夏は偶然出会ったアゲハによって良き夏となった。

 
                                        後藤 幸久

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